樋口耕太郎『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』を一気読みしてしまった!
本書、一気読みしてしまいました。おもしろい!
最初は沖縄の社会構造に興味を惹かれて手に取ったんですが、読み進めていくともっと深い話、人間の自尊心がテーマの本でした。
沖縄社会の分析から人間の自尊心へと論が繋がっていく流れが、とても感動的。
社会モノかと思ったら人間についての本であったという、予想外の驚きと同時に、その結論が非常に胸に響きました。
ざっと内容を追うような紹介ですが、まとめてみたいと思います。
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沖縄社会
沖縄では、車のクラクションは鳴らなさいそうです。
それは、沖縄の人たちが優しいからというだけでなく、クラクションを鳴らす=主張するような人は、社会的に排除されるという、かなり同調圧力が強い、空気を読み合う社会だということ。
友人の誘いを断ったら「裏切り」になるし、人より勉強しようものなら「マーメー(真面目)」と軽蔑される。
大学の教室でも、暗くなってきても誰も電気をつけようとしない。目立つようなことはできないから。
周りの人に非常に気を使って、波風を立てないようにする。
お店は基本的に知り合いの店にいかねばならず、いろいろな商品も定番モノが売れる。定番モノが好きだとか、優れているというわけではなく、いままでと同じものを買えば誰も機嫌を損ねないだろう、という点で売れていく。
かなり強力な、島国根性の空気に支配されているのが沖縄社会のようです。
できるものいじめ
沖縄の貧困率は、日本でダントツ1位。
経済が豊かになるためには生産性が高くならなければいけない。
だけど、人々は創意工夫をして仕事の生産性を上げることはしない。それは周りの人達からの抜け駆けになってしまう。
驚くことに、昇進を断るケースも多い。
リーダーになるということは、上から指示をしなければならない立場に置かれるということであり、いままで平等だった和を乱すことになるし、そうなると他の人達から無視をされてしまうから。
お給料アップよりも、無視をされて職場に居られなくなってしまう危険性の方が高いので、これは実は合理的判断なんですね。
このように、沖縄では、できる人、今までのやり方を変えていこうとする人はハブられてしまう。
そうなると、仕事にはイノベーションは起きず、いままでのやり方を続けることが正しいこととなる。
企業努力をいくらしようと思っても、その根底にある沖縄社会の論理の方が強力なので、生産性は低いまま現状維持が続くことになるわけです。
自尊心の低さ
沖縄は自殺率も高い。教員の鬱も全国1位。犯罪率も高い。
著者はこれらの原因は、自尊心の低さとだ見抜く。
強力な周りの空気に縛られて生きる人間は、自分でないものとして無理やり生きなければならない怒りを抑圧して生きる。それは膨大なエネルギーを消費し、人生の情熱を失い、無感覚さを生む。「自分は、他人から愛される価値がない」と感じる。
自尊心とは、自分はありのままで愛される価値があると信じられることだ。
沖縄の空気の中では、そういった自尊心は育つのが難しい。
「なんくるないさ~」という言葉があるが、それはある意味、悲鳴に近い諦めの叫びではないだろうか。
どうすれば自尊心が回復するのか?
では、どうしたら自尊心が回復するのか。沖縄社会はどうすればよくなるのか。
詳しくは本書をぜひ読んでほしいのだが、著者はこう言っている。
相手の関心に、関心を向けること
その人に関心を持つのと、その人の関心に関心を持つことは全く異なることだ。
人間は自分の関心事について、他の誰かが興味を持って受け止めてくれることで、自尊心が育っていく。
「自分のほんとうの気持ちをわかってもらえた」と感じると、人は自分には価値があると信じられるようになる
これを一人ひとりに向き合って、一歩一歩やっていく。
対処療法的にカウンセラーを付けたり、補助金を投入するのは、その場は一瞬痛みが和らぐ。しかし、それは根本治療にはならない。
根本治療は、人の自尊心を育てること。一人ひとりに向かい合って関心事に関心を聞いていくこと。
それがひいては広がっていき、社会を変えるのだと。
というわけで、たいへんおもしろい本でした。
この記事もその感動のまま一気書きしました(笑)
ぜひ手にとって見てみてください! オススメです!
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